◎木造住宅の劣化原因は「水」と「しろあり」
今年も梅雨の季節がやって来ました。 梅雨時はシロアリ被害が拡散するきっかけとなる羽ありが飛び立つ季節となり、また、ジメジメとした環境から、屋内の湿度が過剰に上昇し、住宅にとって好ましくないカビや菌類が多発する時期でもあります。 さらに、梅雨から夏場にかけて、長引く雨や台風など、雨漏れが多く発生しやすい時期でもあります。 (最近ではゲリラ豪雨等による突発性の雨漏れ被害も見られます) 梅雨は木造住宅にとってあまり優しくない季節といえるのです。
木造住宅が劣化する主な原因は「水」と「しろあり」です。 (住宅が耐震性など基本的な構造性能を有していると仮定します) 「水」と「しろあり」に対してきちんと防護策を講じておけば、建物を長く健全な状態に保つことができるのですが、「水」と「しろあり」に対する対策が甘いと、木造住宅は一気に劣化してしまうのです。
◎水が木造住宅を悪くする
雨漏れが発生すると、主要な構造耐力を担う木材が水を吸い込んでしまいます。 水を多く含んだ木材を放置すると、やがて木材が腐り、必要な強さを保持できなくなります。 壁内部の結露も問題で、長らく放置すると木材を傷める要因となります。壁内部の水分は、一度侵入してしまうと、なかなか外に出て行かないのがやっかいなところです。
さらに木造住宅にダメージを与える「水」は床下にも潜んでいます。
設備機器などからの漏水はもってのほかですが、床下に自然と溜まってしまう湿気も建物に悪影響を及ぼします。 床下がコンクリートで覆われている「ベタ基礎」なら問題ないのですが、地面が見えている「布基礎など」の場合は、地面から水分が上がってきて床下に湿気を発生させてしまいます。 湿気を含んだ空気が上手く換気されればよいのですが、床下に過剰な湿気が溜まってしまうと、木材を腐らせる腐朽菌を発生させてしまいます。 中古物件内覧時には、雨漏れ跡(壁や天井の水が滲みた跡)がないか、外壁にひび割れがないか、床下点検口から覗いてみてベタ基礎かどうか、また床下がカビ臭くないかなど、見た目や間取りの他にチェックすべきポイントがあるのです。
◎戸建住宅における長期修繕計画のすすめ
マンションの場合、区分所有者全員が持分割合に応じた毎月修繕積立金を積み立て、一定期間で計画に応じた修繕を行います。
しかし、戸建の場合は建物の維持・管理は所有者の自己責任となり、必要な対策が講じられていない家屋が多いのが実態です。 (戸建はマンションと違って管理費も修繕積立金も必要ない、といって販売している事業者もいるほどです)
戸建住宅はメンテナンスが必要ないのか?
そんなことはありません。
建築物として風雨にさらされる以上、当然定期的なメンテナンスが必要です。今までは「戸建住宅は一定期間住んだら建て替える」という住宅業界の身勝手な意図から具体的なメンテナンスサービスが提供されてこなかっただけなのです。
戸建住宅は身体と同じと例えられます。
仮に病気になったとしても、発見が早ければ対策も容易で費用も安く済みますが、長らく放置してしまうと大きな改修工事が必要になり、多額の修繕費用が必要になってしまうのです。
戸建住宅の購入を検討している方は、新築であろうと中古であろうと、まずは「定期的にメンテナンスが必要」であることを認識してください。
当然メンテナンスには費用がかかりますので、毎月決まった金額を積み立てておくことが必要です。建築業者に長期に渡る修繕計画を建ててもらうのも良いでしょう。 (少なくとも5年~10年に一回は建築士による点検を行うことをおすすめします)
雨漏れやシロアリ被害はきちんと予防することで避けることができます。
従って、戸建住宅が劣化するということは、必要なメンテナンスを実施していない結果であり、メンテナンスを行わない建物は遅かれ早かれ何らなの劣化事象に悩まれることになるのです。
ローンの返済で修繕費の積み立てが難しい場合は、そもそもその物件が予算オーバーだと考えるのが妥当です。
また、中古住宅を購入する際には、建物の劣化事象を改善することは必要ですが、加えて、予防・保全のための塗装やシロアリ消毒などもあわせて実施することをおすすめします。 住宅購入時にはこれらの費用も含めて住宅ローンを組むことができるからです。
逆にこれらの対策を購入時に予防・保全対策を実施しなかった場合、雨漏れなどが発生したとしても修繕費用のためのローンを新規に組むことが難しく、結果的に応急処置のみで根本的な原因の対処ができないケースも考えられるのです。